出会い そして、「旅人」返上の時かも

 工場まで、あと200メートル。昼飯は何にしようかな・・・と考えながら、小雨の中、トラックのハンドルを握っていた。ふと左側の盛り土の上を見ると、子ネコが私の車を追いかけるようなしぐさを見せている。迷子か捨てられたか… ルームミラー越しに後方を眺めると、対向車を追い反対方向へ、さらに私の後続車を追い再びこちらの方へと、右往左往を繰り返している。カーブを切って私の視界からは消えたが、工場に到着後、一つの思いを心に、その場所へ徒歩で戻った。「もし、まだその場に子ネコがいたら、連れて帰って来よう」と。

 段ボール箱を持ち、5分と経たないうちに現場へ戻ると、盛り土の上で子ネコが途方にくれたような様子だった。私を見るとすぐに寄ってきて、体をなすりつける。かわいがられてはいたようだ。段ボール箱の中でちょっと我慢してもらい、工場へ戻った。腹を減らした子ネコが何を食べるのかも思い浮かばず、急いで近くの量販店へ行き、缶詰とミルクとトイレ用の容器、砂を購入。缶詰を子ネコの目の前に出してやると、ものすごい勢いで食べ始めた。その後は、多少安心したのか、隅っこで昼寝を始めた。

 半ば思いつきで連れてきてしまったが、母が何と言うだろうか。拾ったことは話しておいたが・・・。

 夕方、心配しながら帰宅すると、母の第一声は「まぁ、かわいいねぇ」だった。ネコ好きは私と同じだが、飼うことになるかもしれない事態を、母は肯定的にとらえてくれていた。
 よほど寂しい思いをしたのだろうか、子ネコは、母にも私にもぴったりくっついて離れない。こちらの気持ちも、一気に子ネコに傾く。

 体調を崩していたらいけないので、翌日、動物病院に連れて行ったが、「歯の生え具合から、生後2ヶ月半程度。かなりスリムな体型。お腹が緩くなっているから薬を出すけど、便検査も異常ないし、見た感じも元気だから大丈夫でしょう。落ち着いたら、予防接種にでもいらしてください。」とのこと。その場で子ネコの誕生日を決め、「名前が決まったら教えてください。診察券とカルテに書き込みますから」と、私の家族として迎え入れることを後押ししてくれるようなことを言われて帰って来た。

 それにしても、体の汚れはいくらもないし、トイレも一度教えたら全く失敗しない。もしかしたら迷子なのかも・・・ と思い、公民館の掲示板を覗いてみたが、これと言った掲示もない。工場周辺に、手書きのポスターがあるかも・・・ あってほしいようなあってほしくないような、複雑な心境で探してみたが、見当たらない。

 夜鳴きもすぐになくなり、三日もすれば家にも慣れ、「私、昔からここに住んでますけど、何か御用・・・?」というような顔をしている。就寝前に運動会のようなことをするけど、こちらが横になると布団に入ってきたり、布団の上で丸まったりしている。枕元で「にゃ~」とやられると、夜中でもこちらが飛び起きてしまい、眠りの浅さからなのだろうか、飼い始めの3~4日で、こちらの体重が2キロ近く減ってしまったが、ネコの生活のリズムがこちらに近くなってくると、飼うことの苦労や不安が著しく軽減される気がしてきた。むしろ、新しい家族を迎えた喜びの方が、はるかに大きく感じられる。

 ネコ好きの私が今までネコを飼わなかったのは、旅や外出が多かったから。飼うと出かけられないから飼わなかった・・・ の方が正直な言い方かもしれない。ただ、今回は、雨の中、迷っている子ネコをそのままにしておくことは、どうしても出来なかった。目の前にいる、命を落としてしまうかも知れない生き物から目を背けるようなことがあったら、これからの自分のすべての「運」や「ツキ」を落としてしまう気さえした。この二つに見放されるようなことを自分からするのは、この上もなく愚かなことと、私は日ごろから考えている。

 これからは、このネコが元気でいる限り、外出は少なくなるだろう。今まで随分いろいろなところに出かけてきたけど、これからはそうはいかないし、そうする気もなくなった。自分の行動や考え方を変える契機を、このネコは持ってきてくれたかも知れない。

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この記事へのコメント

紋次郎
2010年07月01日 14:02
いつも、ご拝読させて頂いております。
美人な猫ちゃんですねぇー!こんなに伸び伸び寝ちゃって!!ねこ様、お母様の優しさに触れて安心しちゃってるのでしょうね。
きっとお仕事頑張っていらっしゃるねこ様に、神様からの贈り物ですよ!
お名前決まったら教えて下さい☆
ねこ様
2010年07月02日 09:07
紋次郎様 御来訪ありがとうございます。きっとお元気のこととお察しいたします。

朝晩の食事の用意、トイレやカーペットの清掃など、今までやらなかったような事を私が始めたので、母が驚いております(笑)

しょっちゅう見ている動物の中の一つがネコですが、この年になって初めて同じ屋根の下に住むこととなり、驚きと戸惑いの連続の日々を送っています。こちらとしては当たり前のことだと思っていたことが、ネコには通じないからそう感じるわけで、向こうにしてみれば、私がおかしいと思っているのではないでしょうか。人間社会でも通じるような尺度の違いのようなものを、ネコから学ばせてもらっている気もしています。

一緒に生活するようになってまだ日が浅いですが、いろいろなことが起こったり、経験をさせてもらったりしています。日記としてアップしながら、勝手に決めたこの子の名前も紹介させていただきたいと思っております。再び御来訪いただけたら光栄です。

ありがとうございました。

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